04 紫外線(UV)照射装置の基礎
紫外線照射装置(UV照射装置)の選び方
半導体製造や工業用途で使用される紫外線照射装置(UV照射装置)の光源は、主にUVランプとUV-LEDの2つに大別されます。紫外線(UV)照射装置の導入を検討する際には、対象物へ効率よくUVを照射するためにいくつか抑えておくポイントがあります。



照射する対象(用途・目的)
UVランプは、幅広い波長域のUV光を高い出力で照射することができるため、半導体製造における本露光工程やUVインクの乾燥、表面改質・洗浄など、高い照射強度に加え、異なる波長を組み合わせた処理が求められる場合にUVランプが活用されています。
一方、UV-LEDは指向性が高いため局所的な照射に適しています。また単一波長のため、不要な波長によるワークの劣化や熱などのダメージを抑えつつ、特定の波長に感度を持っている物質(材料)に対して効率的にUV反応を進行させることが可能なため、電子部品や光ファイバーの接着、微細部品の硬化などの用途で活用されています。
照射エリア
ショートアークのUVランプは、レンズやミラーなどの光学系やファイバーなどを用いることで、スポット照射やライン照射、面照射まで幅広いエリアへの照射が可能です。ロングアークのUVランプは、UV光を集光させる用途には不向きですが、反射板(リフレクター)などを利用することで広範囲に均一なUV光を照射することができます。
UV-LEDは、LED素子やパッケージの配置を工夫することで、スポット照射、ライン照射、面照射など、さまざまな照射形状に対応できます。さらに、UV-LEDの高い指向性を活かし、コリメートレンズなどの光学系と組み合わせることで、より平行光に近いUV光を照射することも可能です。
また、UV-LEDを広い範囲に配置することで大面積照射も実現できますが、UV-LEDの数が多くなる場合には水冷などによる冷却も考慮する必要があります。
コストや環境負荷
UVランプとUV-LEDの寿命を比較すると、UVランプはおよそ3~4,000h、UV-LEDはおよそ2~30,000h(積算点灯時間)で交換が必要になります。※使用条件や使用環境などにより時間は変動します。
UVランプは水銀を使用しているため、廃棄時には適切な処理が必要となります。近年では水銀の環境規制が強化されており、UVランプの管理や廃棄によるコストが課題となっています。
一方、UV-LEDは水銀を使用しないため、環境への影響が少なく、規制にも対応しやすいという利点があります。また、UV-LEDは上述したようにUVランプより寿命が長くエネルギー効率も高いためランニングコストの削減につながるといったメリットがあります。
まとめ
このように、UV照射装置の選定において、照射対象や用途、必要な波長や照射エリア、コストや環境負荷など、様々な要素を総合的に考慮することが重要となります。
UVランプとUV-LEDにはそれぞれの特性やメリット・デメリットがあるため、目的に応じて最適な光源を選択する必要があります。
各用途における紫外線(UV)照射装置のアプリケーション
ここからは、各用途における紫外線(UV)照射装置の具体的なアプリケーションについて紹介します。
「用途①:洗浄・表面改質」の事例:半導体ウエハ用紫外線(UV)オゾン洗浄装置

半導体ウエハの洗浄用途で、UV照射装置が用いられています。UVを照射することでオゾンを生成し、オゾンによりウエハ表面の有機物を除去します。半導体ウエハ用UVオゾン洗浄装置は試作・開発用、量産用があります。試作・開発用は半自動で生産能力が低く、量産用は自動機となります。
「用途②:硬化」の事例:光ファイバーコーティング材硬化用UV照射装置

光ファイバーの保護や強度の向上を目的に、コーティング材が塗布され、コーティング材の硬化にUV照射装置が使用されます。コーティング材によって用いられる波長は異なります。複数波長の照射が必要な場合が多く、光源としてメタルハライドランプや高圧水銀ランプが使用されます。
「用途③:殺菌」の事例:UV水除菌装置

水の除菌装置には、UV照射装置が搭載されています。水除菌装置の用途は、上下水道、飲料、ボイラー水など様々です。220nm程度の深紫外線領域のUVが用いられており、水銀ランプを光源にすることが一般的です。
「用途④:露光」の事例:コーターデベロッパ用紫外線(UV)照射装置

半導体製造装置のコータデベロッパとは、フォトレジストの塗布と現像を行う装置です。シリコンウエハにレジストをスピンコートした際に発生するウエハ周辺部の不要レジストを除去するために、UV(紫外線)照射装置が用いられています。
「用途⑤:非破壊検査」の事例:蛍光浸透探傷装置用紫外線(UV)照射装置

蛍光浸透探傷装置は、蛍光物質が添加された浸透液をワークに塗布し、紫外線を当てることで、目視による発見が難しい傷の有無を、非破壊で検査する装置です。蛍光探傷装置に使用されるUVの波長は365nmが一般的です。また、紫外線強度が求められることからUVランプ・UV-LEDが光源として使用されています。
「用途⑥:脱臭・消臭」の事例:脱臭・消臭器用UV照射装置
「用途⑦:サンシャインウェザーメーター(耐候性試験機)」の事例:サンシャインウェザーメーター用紫外線(UV)照射装置

サンシャインウェザーメータは、耐候性試験機と呼ばれ、太陽光による劣化を評価する装置です。太陽光と同様の条件を人工的に作り出す必要があり、屋外と比較し促進倍率10倍以上で試験を行うことが可能です。用途、求める波長によって、サンシャインウェザーメーターに搭載される光源は異なります。
「用途⑧:乾燥」の事例:UV乾燥機用照射装置

印刷用UVインキについて、硬化させるためにUV乾燥機が用いられており、UV乾燥機にはその名の通り、UV光源が搭載されています。
求める波長や用途によっては、メタルハライドランプ、キセノンランプが用いられています。
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